こんにちは、すずなり農園代表の松尾です。
はじめに
協生農法というものをご存知でしょうか。
ムー農園の野人、ムーさんが提唱し、原人こと船橋博士がマニュアル化した、おそらく今、世界で最も画期的な農法です。
詳しい説明は、ムーさんのブログの協生農法カテゴリを参照していただくといいと思います。
協生農法は、もともと、ピラミッド農法としてムーさんが編み出したものを、野人船橋博士が、協生農法と名付けたものです。
2010年1月16日のムーさんのブログに詳しく書いてあります。
以下、船橋博士が協生農法と名づけた理由です。素晴らしい文章なので、全文を掲載させていただきます。
『この農法を数理モデルなどを使って学術的に研究して行く際に、学術的な正式名称が必要になると思い、色々と考えてみました。
野人農法の内実を考えると、
「自然の生態系に存在する環境と動植物の間の協調作用を、人間にとって価値があるように選択して混生させ、相乗効果を最大化する農法」
という原理が通底しているように思います。
学術概念は名が体を表すことが重要ですので、これらの原理から文字をとって
「協生農法(きょうせいのうほう)」、英語名”Synecological Farming(シネコロジカル ファーミング)” というのはどうでしょう。
「協」の字に、ピラミッド農法の由来となった様々な力を組み合わせる様子が体現されています。
農業を生態系の一部として捉え、それを物理学的なモデルを使って研究する分野の論文誌もいくつかみつかりました。
野人農法を実践する中で重要ないくつかの典型的な相互作用を使って、プロトタイプの数理モデルが作れると思います。
モデルの利用法としては、シミュレーションを使ってこの農法の仕組みを説明したり、将来的には施工前の土地条件と施工する内容を入力すると、大体どのような植生で混生が進むかの予想とデザインに使えると思います。
また、生態系のどのような状態が生命力が高い状態なのかを農法の実践を通して知った上で、(モデルに還元しきれるものではありませんが)物理モデルを通じて生命力の条件を定義することが今の科学にとって重要であり、栄養学信仰を突き崩せる玉虫色の部分だと思います。』
引用元:野人エッセイす「協生農法の由来」
農業を生態系の一部として捉え、物理学的な数理モデルに落とし込むことにより、シミュレーションによる植生のデザインを可能とし、生命力の条件を定義する、ということを目的としていることがわかります。
慣行農法では、少なくとも同じ畝、大抵は同じ畑内で、単一の植物を育てますが、協生農法では、多様な植物を混成させることにより、植物の生命力を最大化しようとします。
そのため、どのように混成させていくか、というのが大変重要になってきます。
協生農法マニュアルには、その実践方法が書いてあり、それを松尾なりに読み解くことにより、更なる理解を深めたいと思います。
ちなみに、すべて松尾的解釈なので、間違っている場合はご指摘ください。
また、以降はマニュアルの章立てで進めるので、マニュアル片手に読んでいただけると幸いです。
総論
協生農法の定義
生物学的最適化を目指す
協生農法の制約条件に、以下が挙げられています。
- 無肥料
- 無耕起
- 無農薬
- 種、苗以外持ち込まない
この考え方の根底には、自然農法があります。ムーさんのブログに、種団子に言及する場面が出てくるので、福岡正信さんの自然農法に何らかの繋がりがあると思われます。
福岡正信さんは、稲作と麦作をマメ科の植物と組み合わせた自然農法を作り上げた人物です。ワラ一本の革命という書籍が有名で、哲学書的な面もあるとても面白い本です。
マニュアルには、植物の特性を生かして生態系を人為的に制御することにより、生物学的最適化状態の有用植物を露地栽培する、ということがかいてあります。
まず、ここでの有用植物とは、簡単にいうと野菜のことです。そして、露地栽培法と書かれているので、ハウスなどの使用は想定されていません。あくまで、露地、つまり、屋根などがなく雨露が直に当たる土地での栽培法です。
生物学的最適化状態については、注釈がつけられていますが、ここでのポイントは、複数種の競合、つまり、慣行農法的な単一による作物の栽培ではなく、ひとつの畝に複数種の植物を植えたときに、最も成長する状態を作り出すことを目的としています。
コンパニオンプランツという考え方がありますが、その考え方とは根本的に異なります。コンパニオンプランツでは、例えばナス科の植物にはネギを植えるといいですよ、と言ったような、ある一定の経験則からの組み合わせが定義されていますが、協生農法では、混成密生が基本となっていて、定められたコンパニオン的な考え方はありません。
混成密生が基本なので、従来の慣行農法とも全く違います。同じ場所に同じものをたくさん植えることによる一番の弊害は、連作障害です。同じ場所に同じ作物を植えることにより、ミネラルのバランスが崩れたり、その作物に群がる線虫が増えたりして、その作物が連続で育たなくなります。
ムーさんのプログに、そのあたりの理論が詳しく書いてあります。
松尾的に、興味を惹かれるのは、生態系を構築、制御する、ということです。
畑は放っておくと、草ぼうぼうで見た目荒れ果てたような土地になります。問題になっている耕作放棄地などの状態がそれです。
放置するのではなく、人の手を使って構築、制御するというところが、この農法の肝になる部分だと思います。
生態系とはつまり、食物連鎖がきちんと機能している状態で、その頂点が有用植物となるように、人為的に構築、制御していく手法と捉えることができると思います。
ちょっとこのあたりの解釈は間違っているかもしれませんが、考え方としてしっくりきて、野菜が育つ環境を、生態系の一部として制御していこうということを目標とするのがわかりやすいと思います。
生業として成り立たせる
協生農法では、栽培法、活用法、販売法という3分野が存在し、職業農家として成立することを目的としています。
自然農法でよく言われるのが、手間がかかりすぎるのでは、とか、大量生産ができないのでは、という、職農として成り立たないのではというネガティブな意見ですが、協生農法は、その部分にも踏み込んだ定義がなされています。
ムーさんによると、協生農法の年間生産量は最大40倍とのことです。俄かに信じがたいこの数値は、達成目標としては十分チャレンジングです。
さらに、労力と経費は10分の1なので、単純計算すると、一人当たり同じ労働で400倍の生産性を上げることができます。
つまり、畑の面積は今の40分の1しか必要ではなく、労働力も10分の1でよい。こんな画期的な農法が他にあるでしょうか。
一反の畑があれば、片手間で年間200万の収益を上げることができるそうです。
活用法
活用法に関しては、協生農園のみではなく、農園を含んだその地域の生態系も含めてすべてから、利用可能な資源を取り出し、そしてそれに経済的付加価値をつけて商品化する方法論です。
つまり、農園で野菜を作ってそれを売るというだけではなく、協生農法によって形成された周辺の環境も利用して、お金を稼ごうという考え方です。
興味深いのは、教育学習機会による活用です。協生農法の生態系は、例えば、その形成の経緯や、生息する昆虫種の研究、生育の違いによる土壌の成分比較など、協生農法の農園は教育的な価値があるということです。
アイデア次第で、いろいろな活用法を生み出し、経済的価値を付与していくことができるのが協生農法の強みということですね。
販売法
強制農法が目指す野生状態の産物の流通、というのもひとつのポイントになると思います。
慣行農法ではF1種を用いて、同じ時期に同じ形の野菜が安定して収穫できることを目標としています。
現在の流通の大部分は、この慣行農法を元に作り上げられています。
協生農法では、混成密生が原則なので、例えば、キャベツを100個安定的に仕入れたい、といった要望に応えるのは難しいと考えます。
なので、購入者の意識改革が必要なのではないかと考えます。
例えば、今日はカレーを作りたいから、ジャガイモとニンジンと玉ねぎを買おう、というステレオタイプなカレーのイメージに基づく思考の流れではなく、今日はほうれん草とサツマイモとインゲンが取れたから、それらを使ったカレーを作ろう、という、あるものを使うという思考に変えねばなりません。
あとは、見た目が綺麗で形が揃って大きい野菜を買ってしまいがちな考え方を改め、不揃いで小さくても味かよく体にもよい協生農法野菜を買うマインドに変化しないといけません。
自分もつい、スーパーに行くと形や色や大きさで野菜を判断してしまいがちです。
そういったこともあり、直販モデルが中心になっていると思われます。
まとめ
協生農法の定義では、満たすべき制約条件の中で生物学的最適化を目指すことが協生農法だとされています。
その上で、生業として成り立たせるために、栽培法、活用法、販売法の3分野について、実践を通じた開発が必要だと定義されています。
植物の特性を人間が知った上で、協生農園の神として、生物学的最適化にうまく導いてあげるということが必要です。
それには、植物のことだけではなく、昆虫や動物、微生物も含めた、森羅万象あらゆることに想いを巡らせながら野菜づくりをする必要がありそうです。
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