協生農法マニュアルを読み解く〜第1章総論「協生農法の原理」その1

はじめに

すずなり農園代表の松尾です。協生農法のマニュアルを勉強しながらまとめています。

協生農法は、野人ムーさんが提唱する農法で、詳しくは野人エッセイすというブログに書いてあります。

協生農法は、自然農法の考え方がベースにありますが、より画期的で実践性に富んだ農法だと思っています。

アフリカのブルキナファソでの実践では、たったの1年間でその土地の収量を何倍にも増やした実績があります。

壊れゆく地球環境を農業から立て直す ソニーコンピュータサイエンス研究所

このムービーを見ていただくと、なんかすごいなあと感じていただけると思います。

協生農法には、ムービーにも出演している船橋博士がまとめたマニュアルが存在します。

そのマニュアルを松尾なりに読み解き、松尾なりに実践してみたいと思ってます。今回はその第二弾です。

マニュアルの章立てでまとめますので、マニュアル片手に読んでいただけると幸いです。

総論

協生農法の原理

生態系を作り上げてしまう

協生農法とは、「食糧生産するための生態系自体を作り上げてしまう」農法です。

生態系を作る。昔、ゲームでシムシティや、シムアースなどをやりました。仮想の街や地球を作り上げるゲームです。

協生農法は、現実世界の農園に生態系を作る、いや、作り上げてしまいます。

普通の畑は、野菜が列に整然と並んでいて、雑草も生えておらず、寄ってきた虫は農薬で殺してしまいます。

土は化学肥料や有機肥料で人為的に肥えさせられ、生き物がバランスよく生きていけない死の土となっています。

ミネラルのバランスが偏り、特定線虫などの生き物が増加し、その結果として連作障害になります。

今の農場は、生態系から切り離されてしまっています。

もともと、植物は生態系の一部です。人が品種改良して、実や葉が大きくなっているとしても、生態系の一部です。

そうなんです、野菜は植物であり、生態系の一部として育つべきなのです。

生物の多様性

その場所に定着、出入りしている種の多様性を増やすことで、生態系を構築することができます。

例えば、農場に畝を作って白菜を植えたとします。

その白菜にナメクジが寄ってきます。

そのナメクジを求めて蛙がきます。

その蛙を食べに鳥がきます。

鳥が糞をします。糞の中には植物の種が含まれてます。

糞の中にはミネラルも含まれてます。

新たな種が芽吹き、土にはミネラルが増え、微生物が増えていきます。

芽吹いた芽の、根っこは、土を耕します。

鳥やカエルの死骸もまた、微生物や虫を呼び寄せます。

こんな感じで、白菜を植えることにより、生物が多様になっていき、そこに小さな生態系が出来上がります。

ただ、そのまま放っておくと、耕作放棄地のようにただの荒地のような状態になります。

多分それが本来の生態系の形なのだと思いますが、今やっているのは農業です。

有用植物(野菜)を積極的に植えることにより、人為的に生態系を構築するというところが協生農法の肝となるところだと思います。

生物の多様性が高まると何が起きるかというと、生態系機能が高まります。

生態系機能とは、環境を調整する機能のことで、気温、湿度、日照量、土壌の有機物やミネラルなどの環境条件を最適な範囲に調整します。

つまり、生物の多様性が上がると、自動的にいい感じの環境にしてくれるようになるということです。

そして、生態系機能が高まると、より多くの生物が住めるような環境になっていくため、さらに多様性が高まるので、生態系機能も高まるという正のスパイラルが出来上がります。

慣行農法では、1種類の野菜を一つの畝で作り、雑草などはすべて取り除き、虫も寄せ付けないようにするため、生物の多様性がありません。

なので、生態系機能はほぼ存在しないため、環境条件の自動的な最適化は望めません。

そのため、慣行農法では、畑を耕したり、肥料を施したり、農薬を撒いたりして、環境の全てを人為的に作り上げなければなりません。

とにかく、生物の多様性を上げれば、あとは自然が良きに計らってくれます。

人は、有用植物(野菜)がその環境で優勢になるように、タネをまき苗を植え繁茂してきた下草をある程度刈ってあげて土の上に敷くという作業のみをすればよいのです。

生態系サービス

生物の多様性の向上と、生態系機能の向上により、生態系サービスを取り出すことができるようになります。

生態系サービスとは、以下の5つに大きく分かれています。

  • 供給サービス
  • 調整サービス
  • 文化サービス
  • 基盤サービス
  • 保全サービス
供給サービス

供給サービスは、食料や水といったものを生産し提供するサービスです。生態系が構築されることにより、その生態系から食料や水など色々なものが供給されます。

調整サービス

調整サービスは、生態系が発達することにより、気候や環境をいい具合に調整してくれるサービスです。このことは、生態系機能の部分に出てきた事柄のことだと思います。砂漠では朝夕の気温差が激しかったりしますが、森の中は過ごしやすい感じがする、そんな感じのことが生態系の発達により提供されるということです。

文化サービス

文化サービスは、レクリエーションなどの文化的、精神的利益をもたらすサービスです。ここでの文化サービスとは、例えば、教育目的で農園が利用できたりすることなどがあると思います。精神的利益というのがどのようなことを指しているのか、現時点で理解できていません。わかったら追記します。

基盤サービス

基盤サービスは、生態系向上による栄養の循環や、光合成による酸素の循環のサービスです。生物が多様化することにより、そこに住む生物が栄養を供給したり、その栄養を吸収したりします。そういった栄養の循環が提供されます。また、たくさんの植物が存在することで、活発に光合成がなされ、多くの酸素が供給されます。そういった、生態系の基盤となるものを循環させるサービスです。

保全サービス

保全サービスは、不慮の出来事から環境を保全するサービスです。例えば、洪水が発生した際に流されにくくしたり、また、被害を受けた場合でも環境が自己修復していくようなサービスです。

環境回復・構築効果

協生農法は、劣化した環境の生態系を回復することができます。生態系サービスにおける、調整サービスや保全サービスによる機能です。

協生農法のすごいところは、砂漠化してしまった土地も回復できるということです。冒頭であげたブルキナファソの砂漠を、たった一年で作物の収穫できる土地に変えてしまった例などは、そのことを顕著に表しています。

慣行農法では、すでにある環境を利用し、その土地を劣化させることにより成り立っている農法です。協生農法は、砂漠とか、そういった極端な場所だけではなく、そういった農業で環境が破壊されてしまった土地を回復させることも可能です。

協生農法が広まることにより、劣化してしまった世界中の土地が、生態系を取り戻し、豊かな大地に戻ることを願います。

まとめ

協生農法は、生態系を作り上げてしまう農法です。生態系を作るためには、まず、生物の多様性を向上させます。すると、生態系機能が向上し、農園の環境が自動的に調整されていき、生物が住み良い環境になっていきます。

生物が住みよい環境になると、より多くの生物が棲みつくため、生物の多様性が上がり、そして、生態系機能がさらに向上します。

生物の多様性と生態系機能は相乗的な関係性ですね。

そして、多様性や機能が向上した生態系からは、様々なサービスが供給されます。それらを有効に活用し、生業としての農業として発展させていくことができます。

さらに、劣化した土地を回復することもできます。現在、地球上では、農薬や有機肥料を使用した農業により、土地が劣化し、砂漠化が広がっています。そういったことに歯止めをかけるためにも、協生農法を広めたいと考えます。

YouTubeでも解説してます

【協生農法解説3】1-2.協生農法の原理 生態系を構築するとは?協生農法の魅力を、実践マニュアルの解説を通じてお伝えします。生物多様性について説明します【マインドマップ】
【協生農法解説4】1-2.協生農法の原理 生態系がゆたかになると?協生農法の魅力を、実践マニュアルの解説を通じてお伝えします。生態系機能について説明します【マインドマップ】

参照

協生農法マニュアル

野人エッセイす

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