はじめに
すずなり農園代表の松尾です。
協生農法のマニュアルを読んで勉強し、それをまとめています。
ただ単に読むだけでは深く理解できなかったことが、こうしてまとめることにより、深まっていく実感があります。
協生農法は、自然の摂理をうまく活用した、とても画期的な農法だと思います。
今回は、マニュアルの第1章の1-2 協生農法の原理の2ページ目です。マニュアルだと、9ページからです。
協生農法マニュアルは、論文チックに書かれているため、そういうのに慣れてない方には読むのが難しく感じるかもしれません。
このまとめが、どなたかのお役に立てればいいなと思ってます。
参照元:協生農法マニュアル
総論
協生農法の原理〜9ページから
シグモイド型の成長
協生農法の実践を進めると、圃場の生物多様性は、時間とともに向上していきます。
そして、その向上はシグモイド型の成長をたどります。
シグモイドとは、下記のような曲線です。
数式で書くと以下のようになります。ただし、下記の数式はひとつの例で、こういった形を表す曲線を総じてシグモイドと呼びます。
この曲線の特徴は、立ち上がりがゆっくりで、途中から急激に上昇し、最後はある一定の数で安定します。
シグモイド関数は、人工知能で、人間の神経細胞の伝達を模した、ニューラルネットワークの活性化関数に使用されます。
また、ある閉じた空間の生命の増加などもシグモイド型の曲線になります。
大雑把に言うと、シグモイド曲線と生命活動とは密接な関わりがありそうということです。
協生農園の生物多様性も、圃場という閉じた空間でシグモイドを形成します。
最初の傾斜がゆるい部分は、協生農法への移行局面です。
今までただの土地だったところに畝を作りタネを撒き苗を植えると、そこから協生農法への移行が始まります。
ただし、初期段階では、なかなか生物多様性は上がりません。
根気強くタネを撒き苗を植え、虫や小動物を呼び込み、生物多様性をあげていきます。
この段階でとれる野菜は、生態最適によって供給される健全な植物組織には至ってません。
協生農法で作られた野菜は、とてもクリアな味がします。その野菜の状態が、健全な植物組織の野菜です。
慣行農法による、肥料や水で太らされた植物は、健全ではない植物組織となってしまっています。
細胞の一つ一つが肥大化してしまっているのです。
そういった野菜は、置いておくとすぐ腐って溶けてしまいます。
買ってきたほうれん草をフライパンで炒めると、水分が出てグチョグチョになり、縮んで小さくなってしまうと思います。
小さくなって縮んだ大きさが本来の植物の大きさなのでしょう。
野菜を買うとき、つい大きいのを買ってしまいますが、その野菜は肥料や水で肥大化しているだけです。
小さくても健全な野菜を食べたいものです。
岡本よりたかさんの本に詳しく載ってますので、ご興味のある方は読んでみてください。
シグモイド局面の後半
シグモイド型に成長を続けた生物の多様性は、やがて安定期に入ります。
その時、その圃場では、生物多様性と生態系機能が、十分密に形成された状態、つまり、協生農法としての本来の状態になったと言えます。
この状態になると、協生農法としての生産物の販売が可能になり、経済価値化を行うことにより、協生農法の目的の一つである、生業としての農業とすることができます。
生態系が完全に構築すれば、構築された生態系を損なうことなく、生業として成り立つレベルの野菜が収穫可能となります。
生態系機能の成長段階では、せっかく構築された生態系が損なわれてしまうかもしれないため、注意深い対応が必要となってきます。
判断基準としては、周辺の自然植生より、生物の多様性が上回っているかどうかです。
この状態では、圃場に定着している生物が、それぞれそこで生態系機能を発揮している状態です。
この状態を持続させるための管理としては、自然に生えてきた草木を全部刈り取ったりせずに、少し残して刈り取り、そして、刈った草木も含めて生態系構築に活用していく事です。
このあたりのやり方は、後ほど詳しく出てきます。
まとめ
協生農法では、生物の多様性と生態系機能の向上を目指します。
農園に、いろんな植物やいろんな生き物を増やしましょう、ということです。
ただ増やすのではなく、野菜を中心とした有用植物が最も優勢になるように、人が管理する必要があります。
そしてその増え方はシグモイド曲線に従って増えていきます。シグモイドはいろいろな生物の営みと関連のある曲線です。
最初はなかなか増えませんが、ある時期を過ぎると一気に多様性が高まってきますので、それまでは我慢です。
一生懸命種や苗を植え、自然に生えてきた草木を全部刈るのではなく、野菜が優勢になる程度に刈って、持ち出すのではなく土の上に置く。
そうしていると多様性が向上し、生態系機能も高まることをシグモイド曲線が示しています。
最初は、諦めずに頑張ろう、という事です。
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